話題が社会情勢とかに行っちゃうとアレなので、漫画の話をしようと思う(´・ω・)
第1回目はオルクセン王国史。
野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか
作品サブタイトルを章見出しに紹介を始めるけど、このサブタイトルは行為上事実であって、印象上単純な世間でイメージするところのオークのイメージによる侵略ではない。
・・・って困ったな、余り内容をここで説明したくないんだ。
実際読んで、このお話の玄妙さを知って欲しかったりするんだ。
やばい紹介するんじゃなかった。
いやまぁサワリの部分から言えば、冒頭はオーク王の前に跪き、助力を請うダークエルフという構図から始まる。
この構図で一般的(?)オークイメージで言えば、力で従属させ組み敷き慰み者にする近い未来が見えるけど、そういう話じゃねんだわ。
私ちゃんと書いてんだわ、「助力を請うダークエルフ」って。
「助命を請うダークエルフ」とは書いてねんだわ。
何故ダークエルフの族長、ヒロインであるディネルースはオーク王に助けを求めたのか。
ダークエルフの氏族は、”黒”であるという偏見や差別にさらされながらも、一定の生存権を得てエルフの国の中で平穏に暮らしていた。
そこに何をとち狂ったか、高慢ちきな白エルフ共が黒(デック)は消毒ダァとばかりに村々を襲って突如虐殺を始めたのだ。
ディネルースは少数の仲間を伴って逃げ、国境の川を越えオークの国に落ちのびてきた。
しかし、氏族全体で7万を数えるダークエルフの中の僅か数人の存命だけを確認した今、残された数多の同族達は未だに大禍に遭っている。
故に僅かな物資と武器の提供を求めた。
ディネルースの予想外に聡明で穏健なオーク王グスタフは、救出作戦に自ら協力し作戦の成功を祈ってディネルース他ダークエルフ氏族の難民を国境線で待った。
救出作戦は成功したものの、7万を数えたダークエルフ氏族は、救出できた人口として1万余まで激減し、同じエルフ族でありながら"黒"であるがゆえに刃を向けた白エルフへの復讐を誓う。
・・・のがまず序盤のダークエルフ族の大筋なわけだけど、本来こんな他国の他種族の諍いがもとで国家間戦争になることなんてまずない。
お話で描かれる戦争の図は、将来起こるであろう戦争についてグスタフが国を挙げて企図し、練兵し、国家機構を100年にわたって整備したことから始まる。
つまるところ、これで戦争は起きていないけど、何かしら口火を切る要因があれば、いつでも準備できているぞ、という体制は着々と整えてこの状況に至る。
過去にエルフとの間で起こったロザリンド峡谷戦、人間の将軍によって引き起こされたデュートネ戦争といった歴史的なものをすべて戦訓として、来たるべき将来の「国家総力戦」に備え、やっと物語の起点に立っている。
想像したオークじゃない><。
物語の冒頭でディネルースのオークに対するイメージが語られている。
オークといえば汚らわしく凶悪で非文明的な生き物
淫欲にまみれ
飢えれば同族まで喰らう存在
オークの国、オルクセンに救われてそこでの生活基盤を与えられた彼女らには、彼女ら自身が抱いていた常識や偏見を覆すものばかりだった。
まず他種族国家であること。
コボルトやドワーフ、大鷲族や巨狼族にいたるまで、等しく王国民として扱い、自然に元々普通に国民であったかのような生活を送っていること。
文明、文化が想像を遥かに超えて研がれていること。
旧来的保守的で半ば鎖国状態であり、国交は人間族国家のキャメロットと部分的な外交を結んでいるのみである祖国エルフィンドと比較して、技術革新とたゆまぬ多方面への学術の国土的発展を遂げていること。
それは交通改革も農業改革的なものも、当たり前に軍事面においても。
元々あった種族的特色だった集団突撃戦術すらも捨て、演習も実戦さながらで軍首脳部はこれと並行して机上シミュレーションを行える環境ができていること。
かつて同胞までも喰らっていた筈の飢えれば見境なく食に貪欲なオークが、画期的な生産体制を整え、飢餓という状況とは明らかに無縁な裕福な国家となっていたこと。
オルクセン王国というひとつの国が諸外国からも一目置かれるような有力な国家に成長していることを辺境の半島に住んでいた彼女達は目の当たりにする。
でもこれ異世界転生ものなんすよ
誰が、とか何を?とか言わないけど。
私最初そのつもりでは読んでなかった。
今風に有り体なタイトルを付けるとしたら、「異世界で国王になってた俺は今からエルフの国と戦争をおっぱじめようと思います。」的な、多分読む気も起こさない表題になってたことだろう。そういうのもう飽き飽きだよ。
あ、無理矢理タイトルつけたらほんのりネタバレしたわ。
ただ世界観的には、我が国では明治期くらいで世界的に言えば産業革命期に近いかんじで、うぉぉぉスチームパンクしゅきぃぃぃぃな私には御馳走なのな。
使い古された「剣と魔法のファンタジィ」的な要素は廃されて、「銃と魔法の近代戦顛末記」とでもいうか、本当に戦争に至るまで、そして戦争が始まってからも何がどうなってどう戦果を収めて、ある一部分ではこういう失敗があって、検討課題が刻一刻とリアルタイムに増えていく様が浮かんでくる。
そこに魔法ぶちこんで俺TUEEEEEEEEEEE的な要素はない。
大体この世界の魔法って、直接的なのはテレパシーに近いものだけ。
通信手段と付与魔法と施療剤開発だけで、攻撃魔法ぶっぱとかないから、そんな俺TUEEEEEできる要素はないし、グスタフ王だって一個の生命体なので銃で撃たれれば死ぬ。
そんなご都合主義にあたる部分が一切合切ないので、俺TUEEEEを望んでる思慮の薄い人には、全く面白みがないと思う。
原作小説で震える
漫画版を手に取った。
1~2巻を読んだ頃にSNSで語られる小説版の展開が「ずるいぞ活字読者><。」と思ったので、原作小説版も読んだ・・・いや今もって読んでいる。
これは漫画版を卑下しているわけでもなく、勿論漫画版も面白いし描写が良いんだけど、何故か小説版のほうが登場人物がやたら活き活きしてるし、挿絵を見なくても情景が脳内に投影されるほど克明に描かれている。
そして読みやすい。
主人公格グスタフやヒロイン格のディネルースの過去と現在についてだけならいざ知らず、ちょっと取り上げられる脇役に至るまで過去のどのようなことがあって今こんな風に世で活躍しているだとか、旧来組織的にこういう立場だから今ここの正念場では俺達やってやんよみたいな心意気なんかもアツい。
そしてオークが好きになる(ただしこの世界に限る)
不思議なもんでね。
特にくそかっこいいと思うのは、シュヴェーリン(この悪党!)
過去の戦争でも猛威を振るい、他国ですら記憶されている闘将軍。
そんなに登場機会が群を抜いて多いわけでもないのに王に対する忠誠心と猛将でありながらも王に影響を受け、学究心も人一倍強い・・・が、豪放磊落なイメージが部下の信頼を勝ち得ているため、そのようなインテリなイメージは表に出さない奥ゆかしさ。
まぁオークに限らず、思わず名前を憶えてしまう登場人物は多いんだけど。
ミュフリング少佐とかたタウベルト君とか。
メルヘンナーさん美人よね、コボルトだけど。
かの銀河英雄伝説を・・・
いつか映像化される日を夢想してしまうけど、描かれる世界が緻密であり、過去の歴史的事実まで遡るお話やとある人物をクローズアップしたそこだけの逸話でかつ、今の事象に通じる話だったりと、丁寧に丁寧に描かないと良さが滲み出てこないと思う。
本当に映像化する際には、作品愛を理解した制作チームに第何シーズンを章立てで語る上でどこまで話を進めるかをしっかり設計して描いてほしい。
あとBGMは交響曲がよろしいですな。
長編映像作品となることが望ましいけど、実際に開戦に至るまでは観る人によっては物凄く地味で、「なんでそんなこと語る必要あるの?」ってところまで、丹念に丁寧に描かれている作品なので、そういうとこ映像化するには大きな難関だと思う。
なんせ裏打ちされたテーマが「兵站の重要性」だ。
これは小説版で実際に開戦してからも度々課題になることで、1世紀をかけてどんなに綿密に計画を練っていざ臨戦態勢に至っても、現場で臨機に起こるトラブルや計画との乖離はそこかしこで起こり得るという、その時前線や後方はどう認識しどう対応したか、それは局所的に効果があったか失敗だったかについてまで克明に書かれている。
大局的に見ると悪印象でしかない事象が、その時点の現場としては喫緊の打開策としてこう執らざるを得なかったなどということもある。
そしてそれが将来的に歴史的評価としてどう捉えられたかに至るまで。
そう、銀英伝で言えば「後世の歴史家」と言えば想像の範疇でしかなかったのが、「後の世ではこう評された」ということが、良い面も悪い面も表現されている。
銀英伝、銀河英雄伝説もスペオペとして有名になったけども、オルクセン王国史はぶっちゃけた話、それに匹敵するかそれ以上の一国の歴史を描き出している。
どんな人が好きになれるか
実はグルメ漫画的側面()もあるので、おいしいものをとても美味しそうに頬張っている兵士や女士官達の表情が大好物ならめっちゃ幸せになれる。
平時の食事も糧食としての軍隊飯も、保線作業員しか味わえない簡素な現場飯も登場する。
他の作品とリンクするなら、幼女戦記好きな人は違和感なく読める。
アレのくそったれな戦場がもっとくそったれに描かれている。
漫画版単行本ではまだそこまで至ってないけど、小説版は既に開戦後なため、開戦から連戦オルクセン連勝街道まっしぐら、な風には描かれていない。
勿論大戦果を挙げた戦いもあるが、誰も死なない塹壕戦なんてあるわけないやろ的に凄惨な前線の描写もある。
戦地の後ろ側ではのんびり構えている人などおらず、刻々と範囲が広がっていく兵站物資の輸送経路や時間に戦々恐々としている様など、裏方事情の苦労話みたいなのが好きな人も興味深く読める。
むしろそれが本題みたいに。
私はさして戦記物が大好きというわけでもないけど、通り一遍絶対勝利ウハウハ爽快感のある、ある意味それが英雄か虐殺者か分からないようなのは求めてないし、一個の生命体や一個の国家として、何が根拠になってどのようなものが発明されたり発案されて、内政的にとか外交的にどう活かされていったのか、なんて流れを見るのは面白い。
長命とはいえ、魔種族もやがて死ぬ、それまでにどれだけのことをやり遂げて生きたか、何を以て世界を変革させていったか。
それはある日突然突発的に変わるものではなく、時間を重ねて練り上げられたものであって、人々の意識の中に根付いていったもの、とかいう深い深い物語だと思う。